はじめに  もくじ

『 般若心経を知る 』

著者 信松院 第二十九世 東堂 西村輝成 (にしむらきじょう)

出版社 株式会社 ごま書房新社

はじめに
お釈迦さまは、紀元前553年に北インドは釈迦族の淨飯王の王子としてお生まれになられました。シッタルタ太子と申されましたが、幼い頃より人間は"なぜ生まれ、なぜ老い、なぜ病となり、なぜ死ぬのだろう"という疑問をもたれ、29歳のとき王子の位を捨ててお城を抜け出して山中に籠って難行苦行の末、35歳のときブッタガヤの地の大菩提樹の下で禅定久しくして悟りを得られて"仏陀"となられたのであります。
そして、入滅されるまでの四十余年にわたって"真理"を多くの弟子達に示され語られて、80歳をもって入滅されたものであります。
その後、多くの弟子達は結集して、生前の釈迦の示された教えを語り合い、示し合ってやがてそれが真理となり、経典となって今日に伝えられております。
釈尊は入滅に際しては、法嗣のアサナンダに"自らを依りどころとし、法を依りどころとせよ"と説かれて入滅されました。その後、釈尊の教えは仏教としてインドから東南アジアへ伝播され、戒律を重んじる"南伝仏教"に、そして経典を依りどころとする中国・朝鮮半島・日本へ伝えられた"北伝仏教"即ち大乗仏教にと広まってまいります。
北伝仏教は主に経典を中心として研究され実践され、八万四千の法門として今日に伝えられております。
日本からも多くの祖師が中国に渡り、修業され研鑽し、そして伝えられた仏教が鎌倉期の頃には、現在の宗派・宗団が形成されてまいりましたが、それ以前にも、奈良・平安、そして鎌倉期において貴族階級の間では信仰・教養として写経が盛んに行われていました。
写経行ですが、決して難しい決まりごとがあるわけではありません。写経の机に向かった時には御仏に対すると同じように謙虚な気持ちで机に向かい、墨をすり、筆をとり、そして書写すれば宜しいのです。
お釈迦さまの教えを筆や紙を通じて有難く心にいただければ、それで宜しいのです。写経に優劣はありません。"宗論はいずれが負けても釈迦の恥"という戯れ語もあるように、正法に優劣はありません。経典に対するあなた自身の心と知識、そして写経をご指導いただくときのご縁ある経典を一心にお書きになれば宜しいのです。
ところで写経と申せば、まず、『般若心経』といわれるほどに親しまれております。それは二七六文字という短い文字の中に込められている"空"と"無"の思想が端的に秘められているからでもありましょう。
昨今においては、リーマンショックに端を発して、世界同時の経済不況、雇用不安、特に中小企業においては金融危機が続き、経営者をはじめ被雇用者にも精神的に落ち込んだり、うつ病になったり、自殺者も多出する世相となっています。
『般若心経』を写経することは、経文に込められた知恵をより一層深く知り、自分のものにすることに通じます。そして、日常生活の中のさまざまなこだわりや悩み、苦しみから解放され、心豊かに生きることです。書籍の出版を通じてその糧になることは、僧籍にある私にとっても喜ばしい限りです。
写経をおすすめの指導書もいろいろとございますが、いずれに致しましても、まずは行ずることが大切であります。
皆様の願望成就を祈念いたします。
 

もくじ
はじめに
●人生に功徳をもたらす般若心経
◆写して得る"空"の心の豊かさ=写経
『般若心経』は、私たち日本人に、もっともよく知られているお経です
意味にとらわれると心が見えなくなります
日常生活のあらゆる面でプラスになるのが、写経の功徳です
写経は自分の仏心を気づかせてくれます
『般若心経』は彼岸に渡る大きな船だと考えればよいでしょう
書いた一字一字が仏さまです
「うまく書こう」という意識は、かえって写経のじゃまになります
写経をするときは、信仰、宗派にとらわれる必要はまったくありません
写経の歴史を知ると興味がいっそう深まります
◆写経があなたの人生にもたらしてくれる十の功徳
功徳その一 心にゆとりが生まれます
功徳その二 集中力が高まります
功徳その三 忍耐力がつきます
功徳その四 教養に自信がつきます
功徳その五 物や命を大切にするようになります
功徳その六 姿勢が正しくなります
功徳その七 立ち居、振る舞いがよくなります
功徳その八 人相がよくなり、美人顔になります
功徳その九 家庭が円満になります
功徳その十 子どもの情操教育に絶好です

●お釈迦さまの教え=般若心経を写経する
◆摩訶般若波羅蜜多心経 一文字一文字が仏です
中身を知ってわかる題字のありがたみです
感謝の気持ちをもって、「一字三礼」しましょう ◆観自在菩薩 観音さまはあなたの心の中にいます
観音さまを仰ぎ見る必要はありません
姿を変えて、人を救うのが六観音です
◆行深般若波羅蜜多時 彼岸に渡るための六つの行
菩薩さまの考えの"深さ"とは現実のすべてが空であることを認識しています
一字一字書くことが行になります
◆照見五蘊皆空 写経すると「空」を七回書くことになります
人生八十年は一陣の風にすぎません
「死」は春風を切るがごとしです
死は恐れずとも、自殺はいけません
◆度一切苦厄 自分を捨てれば喧嘩は起こりません
なんでも求めすぎるから苦しみが生じてくるのです
自分を捨てることで喧嘩は起こりません
◆舎利子 舎利子とは、写経をするあなた自身です
お釈迦さまの教えに大勢の弟子は目を開かされます
舎利子は大勢の弟子の代表です
◆色不異空 空不異色 見せかけのうまい字は"空"の最たるものです
両親が生まれるまえの自分とは「空」でしかありません
◆色即是空 空即是色 お経の意味は、やがてわかるときがきます
言葉に表れていない心をとらえることです
富士山は、眺める人の心によって姿をかえます
◆受想行識 亦復如是 三次元の世界にいても、四次元を感じることができます
「識」とは四次元の世界にちゃんと存在します
科学は仏教の宇宙観に追随しています
◆舎利子 是諸法空相 お経のありがたさに、とらわれすぎてはいけません
お経は悟りの境地をさし示す指です
◆不生不滅 見返りを求めるのは、とらわれの証拠です
達磨禅師は武帝にご利益を否定した悟りを開きました
見返りを期待するようでは低次元です
◆不垢不浄 汚れて見えるのは、あなたの心が汚れているからです
絶世の美女もトイレにいきます
不増不滅 形のないものは増えも減りもしません
潮がひいても海の水の量は変わりません
◆是故空中 無色無受想行識 心が動くと、真実が見えなくなります
風があるから幡が揺れるのではありません
◆無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界乃至 無意識界 あるがままの人生を楽しみましょう
対象物との一切の対立をなくします
美食ブーム、楽しむことだけが目的になっても困ります
◆無無明亦無無明尽 "縁"によって、迷いの"因"を断つことができます
花が立派に咲くためには環境にかかってきます
良寛さんは非行少年の心の欠陥をほぐしました
◆乃至無老死 亦無老死尽 死ぬときは死ぬが宜しく候
体の痛みは、かわいがりましょう
死は対立するべきものではありません
◆無苦集滅道 苦しみがあるから、悟ることができます
刹那の楽しさは、苦しさのごまかしです
邪道ではなく正道を歩みましょう
◆無智亦無得 『般若心経』を知ると得をするでしょうか
ロケットはお釈迦さまの手のひらから出られません
◆以無所得故 菩提薩? 他人と喜び悲しみを共有できますか
満員電車の中で席を譲ってあげられますか
観音さまは、菩薩と如来を兼ねている場合もあります
◆依般若波羅蜜多故 生き方すべてにお布施の心を
お布施は、お金だけではありません
お礼を期待せずに行動することが大切です
◆心無?礙 無?礙故 無有恐怖 肩の力を抜いて生きられますか
肩の力を抜いて自然に生きればラクです
写経は自分を無にすることができます
人間は、身を低くしているときが一番安定しています
◆遠離一切?倒夢想 究竟涅槃 あなたは、逆さまにものを見ていませんか
迷ったときの脱却は無我になることです
理に反するから無理が生じます
◆三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 宇宙の中心はあなたです
あらゆる仏が体得した最高の知恵です
「三昧」の境地こそ集中力の極みです
昨日のことも明日のことも思いわずらわないことです
◆故知般若波羅蜜多 是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚 仏教のための仏教ではありません
真言、真言、真言、真言・・・・・、仏の教えは最高です
仏教の理想は仏教を必要としない社会です
仏教は暴走する人間の行動を戒めるブレーキ役です
◆故説般若波羅蜜多 呪即説呪日 羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提娑婆訶 般若心経 写経は心の養生です
みんなで悟りの境地に進みましょう
「喝」は迷いから悟りの世界への転機をもたらす気合です
仏さまの姿がうかんできたら、打ち消すことはありません
禅の世界でも一番大事にすることは「無」です
写経はマイペースで続けることに意味があります

●ひたすら書くことに意味がある写経
◆写経の実践―――筆の選び方から、お経の唱え方まで
筆は穂先の短い、柄の細いものを選びましょう
使い終わった筆は水洗いをしておきます
筆の持ち方に決まりはありません
硯は小さめのものがベストです
昔から使っている硯は、あなたと縁があるのです
ときには硯のタワシ洗いをしましょう
墨はできれば高価なものを用意しましょう
力を入れすぎず、「の」の字を書くようにがポイントです
すり終わってもすぐに書こうとしないことです
線香は精神集中に効果があります
安い線香二本より、高い線香一本を選びましょう
最初はケイ線入りの写経用紙が理想です
書いたお経はお寺に納経してもらいましょう
書写のまえには声を出してお経を読みましょう
菩提道の実践をうたった経文が「四払誓願」です
字を間違えたときも大切に扱う気持ちが大切です
書き終えたら声をだして読んでみましょう
書き終えたら「普回向」を唱えます
普回向 ―――願わくは此の功徳を以って、普く一切に及ぼし我等と衆生と、皆共に仏道を成ぜんことを―――
 以上 『 般若心経を知る 』 より
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